はじめに
50歳を迎えてから新たなキャリアとして「ドローン副業」を始めようとする方は年々増えています。空撮、測量、点検、農薬散布など、活用の幅は広がる一方ですが、その反面「リスク管理」が極めて重要になります。特に他人の財産や身体に損害を与えた場合の賠償責任は、想定以上に大きな金額にのぼることがあります。そこで本稿では、ドローン副業における保険加入の必要性とその具体的な種類・内容・選び方について、分かりやすく、かつ論理的に解説していきます。
1. なぜドローン副業に保険が必要なのか?
1-1. ドローン飛行のリスク
- 機体の墜落:操作ミスや突風、機器の不具合などで墜落する可能性あり。
- 人的被害:通行人に衝突するリスク。
- 物的被害:建物や車両、設備を損傷する可能性。
- 電波干渉やバッテリー切れ:操作不能になる事例も多数。
1-2. 法律上の責任
- 民法上の損害賠償責任(709条):過失により他人に損害を与えた場合、賠償責任が発生。
- 航空法、道路交通法などの関連法規:違反による事故はさらに責任が重くなる。
1-3. 信頼性の担保
- 仕事を請け負う上で「保険に加入しているか」は取引先の選定基準になる。
- 保険未加入の事業者はリスク回避の観点から敬遠されることも。
2. ドローン副業で必要とされる主な保険の種類
2-1. 賠償責任保険
- 対象:第三者に対して与えた身体的・物的損害
- 保険金額の目安:1億円~5億円(案件内容により変動)
- 代表的な保険会社:AIG損保、東京海上日動、三井住友海上、楽天損保など
- 保険料:年間5,000円〜30,000円程度(機体数・飛行内容による)
2-2. 動産総合保険(機体保険)
- 対象:自分のドローンが損壊した場合の補償(例:墜落、水没、盗難など)
- 補償金額:機体の購入金額に準ずる(上限あり)
- 必要性:高額な機体(DJI Mavic 3 など)を運用する場合には必須
2-3. 傷害保険
- 対象:操縦者本人が負傷した場合の医療費、通院費、入院費等
- 適用範囲:副業としてドローン業務を行っている最中の事故
2-4. 法人化後に必要となる保険
- 業務災害補償保険:従業員やアルバイトを雇う場合に必要
- 施設賠償責任保険:オフィスや倉庫を持つ場合に検討
3. ドローン保険の選び方
3-1. 用途別に最適なプランを選ぶ
- 空撮業務のみ:賠償責任保険のみで対応可能
- インフラ点検・農薬散布などの高リスク業務:賠償+機体保険のセット加入が望ましい
- 屋内飛行(イベント撮影など):施設賠償など特殊な保険が必要な場合も
3-2. 加入方法
- ドローンスクール経由:卒業生向けに割安な団体保険が提供されていることも
- ドローン協会加入特典:JUIDAやDPCAなどの会員向けに保険がセット提供される場合も
- 保険会社との直接契約:各社のWebサイトや代理店経由での申込
3-3. 保険選びのチェックポイント
- 免責金額の有無
- 補償対象となる事故の範囲
- 年間保険料と支払限度額のバランス
- 飛行条件(夜間、目視外、人口集中地区など)が補償対象かどうか
4. 保険未加入によるトラブル事例と教訓
事例1:住宅街での空撮中にドローンが駐車中の車に衝突
- 損害:車両修理費用 約35万円
- 対応:保険未加入だったため、全額自己負担
- 教訓:万が一の出費が副業継続の妨げになる
事例2:観光地での空撮中に観光客と接触事故
- 損害:怪我による慰謝料・治療費・休業補償 約80万円
- 対応:賠償責任保険に加入していたため全額カバー
- 教訓:賠償保険が信頼回復と迅速な解決に繋がった
5. 加入のタイミングと手順
- 副業開始前に加入するのが原則
- 案件を受ける前に加入し、契約書などにも保険加入を明記しておく
- ドローンスクールの卒業時
- 操縦技能証明書取得のタイミングで保険加入の案内があることも多い
- 保険会社・ドローン協会のサイトで資料請求・比較検討
- 複数社の見積もりを取るのがベスト
6. ドローン保険に関する最新情報の入手先
情報源 | 内容 |
---|---|
国土交通省ドローンポータル | 保険制度の概要、法制度との関連 |
JUIDA(日本UAS産業振興協議会) | 会員向け保険プラン情報、割引制度 |
ドローンスクール | 加入案内や講習内での説明あり |
保険会社のWebサイト | 保険内容の詳細比較・申込ページ |
まとめ
ドローンを使った副業では、リスク管理が事業継続の鍵を握ります。特に保険への加入は、単なる”安心”を超えて、顧客からの信頼、事故時の金銭的リスク回避、そして自分自身の精神的なゆとりにも直結します。50歳からのチャレンジを安全に、確実に進めていくために、まずは必要な保険をしっかり見極め、計画的に加入していきましょう。
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