はじめに
屋根は劣化しやすい部位でありながら、高所で目視による点検が困難なため、非接触で状態を確認できる赤外線カメラの効果がもっとも発揮されます。
本稿では、戸建て住宅の屋根を対象にした赤外線調査の基本知識から、調査の手順、必要な機材、注意点、実際の活用事例までを、解説します。
1. 屋根の赤外線調査とは
1-1. 赤外線調査の目的
赤外線調査とは、赤外線カメラを使用して建物の表面温度を可視化し、温度の異常から内部の不具合を発見する手法です。屋根においては、以下のような異常の検出に活用されます:
- 雨漏り箇所の特定
- 屋根材の劣化(浮き・ひび割れ)
- 断熱材の効果不良
- 下地の腐食
1-2. なぜ赤外線カメラが有効なのか
目視では見えない屋根裏の湿気や熱のこもりなども、赤外線カメラであれば温度分布として確認できます。水分のある箇所は熱容量が大きいため、昼夜の温度変化において異常な温度差として浮き上がってきます。
2. 屋根の調査に適した赤外線カメラ
2-1. 解像度と感度
屋根診断では比較的高所からの撮影となるため、解像度が高いほど細かい異常を捉えやすくなります。また、微細な温度差を捉えるために感度(NETD)が0.05℃以下のカメラが理想的です。
2-2. おすすめ機種
- FLIR Eシリーズ(E6、E8など):中級者向け、屋根診断にも十分対応
- FLIR ONE Pro:コストを抑えた副業向け、精度は限定的
- DJI Mavic 3T(赤外線ドローン):ドローンを使えば屋根全体を安全に調査可能(上級者向け)
3. 屋根調査の実施条件とタイミング
3-1. 時間帯
- **夕方〜夜間(18時〜21時)**が理想:昼間に太陽で温められた屋根が冷える過程で、異常部位との温度差が明確になる
3-2. 天候条件
- 晴天の翌日が最も適している
- 雨直後は湿気で全体が冷えてしまい判別困難
- 風速が強いと表面温度に影響が出やすい
4. 赤外線調査の具体的な手順
4-1. 事前準備
- 屋根の構造図や過去の補修歴を確認
- 赤外線カメラのバッテリー充電・メモリチェック
- 高所作業となるため安全対策を確認
4-2. 撮影方法
- 三脚または伸縮ポールを使用して屋根全体が見渡せる角度を確保
- ドローンが使用可能であれば全景を空撮する
- ズームやMSX(可視合成)を活用し異常部位を拡大撮影
4-3. 撮影モードの選択
- フル赤外線モードとMSX(可視合成)の切り替え
- カラーパレット(アイアン、レインボーなど)の使い分け
- スポット測定・エリア測定を活用して温度差を記録
4-4. 記録と解析
- 温度の高低差、範囲、異常の位置を記録
- 複数のカットを比較し一貫性を確認
- 可視光画像と照合し、屋根材の状態とリンク
5. 調査結果の読み取りと報告
5-1. 異常の判別
- 熱の滞留:雨漏り箇所や断熱不良の可能性
- 異常に冷えている箇所:水分が蒸発している部位
- パターン化された温度差:下地構造の変化や浮き
5-2. 調査報告書の作成
- 調査概要、撮影日時、使用機器
- 赤外線画像と可視光画像の比較
- 異常個所の特定と所見
- 推奨される対応策(補修・点検)
6. 安全管理と法律の留意点
6-1. 屋根調査のリスク
- 高所での撮影中に落下や転倒の危険
- 屋根に登る際の安全帯の使用
6-2. ドローン使用時のルール
- 航空法に基づく飛行許可が必要(人口集中地区など)
- 目視内飛行、第三者との距離確保
- 事前に周辺住民への告知を行うのが望ましい
7. 屋根診断を副業として活用するために
7-1. 提供できるサービスの内容
- 屋根点検パック(撮影+報告書):2〜5万円
- 雨漏り予防診断:1万円前後
- 定期点検契約(月1回など)
7-2. 顧客獲得の方法
- 地域密着のリフォーム業者と提携
- SNS・ホームページで実績を公開
- 赤外線画像を活用したビジュアルな訴求
7-3. 必要なスキルと資格
- 赤外線建物診断技能士の取得がおすすめ
- ドローン使用の場合は「民間技能認証」または「二等操縦士免許」
- 調査技術だけでなく、報告書作成や顧客対応の力も求められる
まとめ
戸建て住宅の屋根調査において、赤外線カメラは非常に強力なツールです。視覚的な説得力があるだけでなく、安全かつ効率的に異常を検出できるという利点があります。副業として始める場合、初期投資を抑えつつ、効果的に差別化できる分野でもあります。
- 適切な機材選定と使用タイミングが成功のカギ
- 安全管理と法令遵守を忘れずに
- 赤外線画像の読解力を高めることで信頼を獲得
ぜひ、屋根の赤外線調査をあなたの副業の柱の一つとして取り入れてみてください。
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