~50歳からの副業としての第一歩~
はじめに
近年、住宅のメンテナンスに対する関心が高まり、建物の「見えない劣化」を診断する技術が注目されています。その中でも、赤外線カメラを使った外壁診断は、非破壊で効率よく劣化の兆候を見つけられる方法として、多くの需要が見込まれています。
赤外線カメラによる外壁診断に必要な知識、機材、スキル、資格、営業方法などを分かりやすくご紹介します。
1. 赤外線カメラによる外壁診断とは?
1-1. どんな仕組み?
赤外線カメラ(サーモグラフィ)は、物体から放射される赤外線(熱)を可視化する装置です。外壁診断では、壁の内部の温度差を映し出し、以下のような問題の有無を調査します。
- 雨水の侵入(漏水)
- 断熱材の欠損やズレ
- タイルの浮き
- 内部結露
これらの異常は、肉眼では確認できませんが、赤外線カメラなら温度差のパターンで検出できます。
1-2. なぜ需要があるのか?
建物の長寿命化が求められる中、定期的な診断とメンテナンスは欠かせません。しかし、従来の点検方法(目視や打診)は手間と時間がかかります。赤外線カメラを使えば、以下のようなメリットがあります。
- 非破壊検査(建物に傷をつけない)
- 高所でも安全に撮影可能(ドローン併用も可)
- 短時間で診断可能
これにより、マンション管理組合や一般住宅の所有者からのニーズが高まっているのです。
2. 副業で始める前に知っておきたいこと
副業として始める前に、以下の5つの点を理解しておくことが大切です。
2-1. 「赤外線=万能」ではない
赤外線カメラは便利ですが、「天候」「時間帯」「壁材の性質」に大きく影響されます。誤ったタイミングで撮影すると、誤診断の原因となります。正しい知識と経験が重要です。
2-2. 分析力が問われる
撮影したサーモ画像を「読み解く力」が必要です。カメラが撮った画像を見て、どのような現象が起きているかを判断する力を養う必要があります。
2-3. 責任が伴う仕事
建物の診断結果は、補修や修繕の判断材料になります。誤った診断は信頼を損ね、トラブルの元となります。正確性と誠実な対応が求められます。
2-4. 初期投資がある程度必要
赤外線カメラは安価なもので数万円から、高性能機になると数十万円。報告書作成用のソフトや、場合によってはドローンとの連携機材も必要になります。
2-5. 継続的な学習が必要
外壁診断の技術や建築物に関する知識は日々進化します。常に最新情報を学ぶ姿勢が大切です。
3. 赤外線カメラ選びのポイント
3-1. 解像度と感度
赤外線カメラの性能を決める指標は以下の2つです。
- 熱解像度(画素数):160×120以上を推奨
- 熱感度(NETD):0.05℃以下が望ましい
画質が悪いと、小さな異常が見えづらくなります。
3-2. 温度レンジ
建物の診断では、10~50℃程度の温度差を測定する場面が多いため、この範囲が対応できるカメラが適しています。
3-3. 機能
- Wi-Fi連携機能(スマホで確認)
- 画像保存とレポート出力機能
- 可視画像との合成表示(重要)
代表的なメーカー:FLIR、HIKMICRO、Testo など
4. 診断技術を習得するには?
副業で信頼を得るには、「正しい知識と実践力」が必要です。
4-1. 民間資格・講座を受講しよう
おすすめの資格や講座:
- 一般社団法人日本赤外線劣化診断技術普及協会(JITA)
- 「赤外線建物診断技能士」
- 実務に即した講座と認定制度がある
- 日本建築ドローン協会(JADA)
- ドローンと併用した赤外線診断講座も提供
これらを受講することで、赤外線の基礎・診断手法・報告書作成方法などを体系的に学べます。
4-2. 建築基礎知識も必要
壁の構造・仕上げ材の種類・断熱の構造などを理解しておくと、より正確な診断が可能です。最低限の建築用語と外壁構造の理解はマストです。
5. 実際の診断の流れ
赤外線カメラを用いた診断の流れは以下の通りです。
- 現場調査・ヒアリング
- 建物の構造・築年数・過去の修繕歴を確認
- 気象条件の確認
- 晴天日を選ぶ(雨天や強風、湿度が高すぎる日はNG)
- 撮影(早朝または夕方)
- 日射の影響を受けすぎない時間帯を狙う
- 画像解析
- サーモ画像を解析し、異常箇所を特定
- 報告書作成
- 写真・診断結果・推奨対応策をまとめる
6. 副業としての始め方と営業戦略
6-1. 法人化は不要でも開業届は出そう
まずは「個人事業主」として開業届を提出しましょう。副業であっても、収入が発生する以上、税務の対応は必要になります。
6-2. 営業先は?
以下のような先にアプローチすると仕事につながりやすいです。
- マンション管理会社
- 工務店・リフォーム業者
- 不動産仲介業者
- 個人住宅所有者(特に築10年以上)
また、ホームページやSNSで診断実績を発信することで信頼を得られます。
6-3. 価格設定の目安
- 一戸建て:約3~5万円
- アパート・小規模マンション:5~10万円
地域の相場と競合状況に応じて調整しましょう。
7. よくあるトラブルとその対策
7-1. 「異常がない」と診断したが実は劣化が進んでいた
→ 撮影条件が適していたか、解析の見落としがなかったか確認を。ダブルチェックの体制を取るのが理想。
7-2. 天候不良で予定通りの撮影ができない
→ あらかじめ「予備日」を設けてスケジュールを組みましょう。
7-3. 顧客との意思疎通ミス
→ 初回ヒアリングを丁寧に行い、診断の目的・限界・期待値をすり合わせることが大切です。
まとめ
赤外線カメラによる外壁診断は、未経験からでも始めやすい副業です。初期投資や学習は必要ですが、建築のプロではなくても、誠実に学び、経験を積むことで信頼される診断士になることができます。
ぜひ、第一歩を踏み出してみてください。
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